「ささやきュビズム」はvocalconsort initiumが2019年に委嘱初演を行なった24人24声のための声楽作品です。auditoriumでは多重録音によって新しく生まれ直した「ささやきュビズム」を、動画付きの通常版および立体音響を楽しめるバイノーラル版（ステレオイヤホン推奨）の二種類でお楽しみください。（谷 郁）

合唱という編成の表現において、「ハーモニーの形成」を一番の醍醐味として語られることが多いですが、ここでいう「ハーモニー」とは、音の堆積（縦）の響きを指すことが殆どです。きっと学校の音楽の授業などで、この「ハーモニー」を奏でる喜びを経験した人も少なくはないでしょう。

そこで私は、vocalconsort initiumだからこそできる「ハーモニーの形成」を、ぜひ聴衆の皆様にも体感していただきたいと考えました。

ここ数年、私が作品を作る際に2つほど意識していることがあります。それは「演者の顔が見える作品」「聴衆が全てを認知できる作品」を目指す、ということです。ここでいう認知とは、単に音が聞き取れるということだけではなく、「認知できないことを認知できる」という意味も含まれています。

それらを実現する方法として模索した結果、「一人1声部を担い、更にサラウンド効果を用いる」という形に辿り着きました。また、initiumが得意としている「ハーモニーの形成」をよりリアルな体験として届けるため、テキストには意味を持たせず、オノマトペのように音像や音色を模したものを割り当てることにしました。

今回のオーディトリウムでは、新たに24声12人の合唱作品として収録されましたが、初演時の24声24人編成と同じ体験をお届けできるでしょう。また、マイクを通して、録音したことにより、更に一人一人の顔（声）が見える作品として生まれ変わっています。

ぜひ耳を研ぎ澄ませて、initiumが作る「ハーモニー」を体感していただけたら幸いです。（成清 翠）